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【採用マーケティングとは】通常のマーケティングとの共通点や違いを解説

採用マーケティングとは

「採用マーケティング」という言葉を聞く機会が近年増えているのではないでしょうか。採用マーケティングとは、マーケティングの概念と手法を採用活動に取り入れることで、自社に合致する人材を効率的に獲得するための戦略です。この記事では、採用マーケティングの基礎知識と、一般的なマーケティングとの共通点や違いをまとめたいと思います。

ライター:タイスケ|Taisuke
事業会社(日系および外資)でマーケティング歴10年以上。戦略立案など上流から広告やセールスライティングなどの下流までをワンストップで推進できることが強みです。豪州Bond大学でMBAを取得しており経営学にも精通しています。著書「マーケティング思考のセールスライティング基礎と定石」
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参考資料

  • PERSOL『採用マーケティングとは?メリットや実践の6ステップを解説』
  • 識学総研『採用マーケティングとは?フレームワークや成功事例なども解説』

目次

採用マーケティングの重要性

近年、採用マーケティングが重要視される背景には、以下の3つの大きな変化があります。

  • 終身雇用制の終焉に伴う転職機会の増加: 特に日本では企業による終身雇用制が終わりつつあり、転職が一般的になりました。人材市場が流動的になることで、より企業が良い人材を獲得するための戦略性が求められるようになりました。
  • 人材不足による採用競争の激化: 少子高齢化や、IT人材の不足などの背景により、企業間の採用競争が激化し、優秀な人材を確保することはますます困難になっています。これも、採用に戦略性が求められるようになっていることの背景です。
  • SNS拡大などによるメディアの多様化: SNSや転職プラットフォームなど、求職者の情報収集媒体が多様化しています。これにより、インターネット上でどのようにユーザーとコミュニケーションをとっていくかというデジタルマーケティングの視点が求められるようになりました。

採用マーケティングのプロセス

採用マーケティングは、マーケティングファネルの考え方が適用できます。採用マーケティングの場合は、「認知」「興味」「応募」「選考」「内定(承諾)」という段階で構成されます。それぞれを見ていきましょう。

  1. 認知:SNSやWEB広告、複数企業の合同イベント参加などを通じて、自社の存在を潜在的な候補者に認知してもらう段階です。いかに自社が求めている条件に合った優秀な人材と接点を持つことができるかというのがキーになるでしょう。
  2. 興味:求人サイトや企業ホームページ、採用パンフレットなどを通じて、自社の事業内容、社風、仕事内容などを理解してもらう段階です。わかりやすいWEBサイト、企業の特徴と魅力をシャープに表現したパンフレットなど、いかに上手く広報ができるかという点がこの段階のポイントになります。
  3. 応募:自社サイトの求人ページや転職サイトなどを通じて、応募してもらう段階です。応募へ導くために、自社説明会やカジュアル面談などを通して、自社への興味を高めてもらうこともあるでしょう。新卒採用の場合は、インターンシップ、OB・OG訪問なども標準的な手段となります。
  4. 選考:自社に求められる人材を獲得するための選考の段階です。企業側が求職者を選考するのと同時に、求職者側も企業を見極めるプロセスであることに注意が必要です。面接官の求職者に対する態度も採用ブランディングの一部となります。
  5. 内定(承諾):有力な候補者に内定を出す段階です。通常のマーケティングでいうと、クロージングとほぼ同義です。求職者を惹きつける待遇やポジションを提示できるかどうか、そして候補者を口説き、内定を承諾してもらえるかどうかが鍵になります。

ここでは内定承諾までをゴールとして5段階をご紹介しましたが、より広い視点に立つと、内定承諾後、この候補者は入社し、配属された部門で活躍。そして企業の魅力をアンバサダー的に発信する役割となっていくところまでがマーケティングプロセスであるとも言えます。ロイヤルカスタマーが商品の魅力を口コミするような位置付けですね。

通常のマーケティングと採用マーケティングの共通点と違い

採用マーケティングについての解像度を上げるために、通常のマーケティングとの共通点や違いを確認していきましょう。まず、採用マーケティングと通常のマーケティングには、以下の共通点があります。

  • マーケティングファネルがある:マーケティングファネルとは、顧客がブランドを認知し購入に至るまでにたどる消費行動プロセスを指します。顧客を採用の候補者と置き換えることで、顧客(候補者)との関係構築を段階的に進めていくという点でこれらは共通しています。上記の採用マーケティングのプロセスのように、採用でもファネルの考え方が適用できます。

マーケティングファネルについては以下の記事もご参考ください。

marketing101.hateblo.jp

  • 3Cを当てはめられる:3Cとは、Customer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の観点で取り巻く環境を分析し戦略を練る際に使う王道のマーケティングフレームワークです。採用についても顧客(候補者)分析、競合分析、自社分析という3つの視点で戦略を立てるという点で共通しています。
  • WEBサイトや広告で宣伝する:これは当然と言えば当然ですが、自社の魅力を伝えるために、WEBサイトや広告などを活用しプロモーションしていくという点でも、マーケティングと採用マーケティングは共通しています。

一方で、採用マーケティングと通常のマーケティングには、以下のような違いもあります。

  • コンバージョンポイントは採用と商品購入:通常のマーケティングでは商品購入がコンバージョンポイントですが、採用マーケティングでは採用(内定承諾と入社)がコンバージョンポイントとなります。消費者がお金を払って完了する通常のマーケティングに対し、採用では企業側がお金を出して候補者に入社してもらうので、立場が逆という見方もできますね。
  • 採用はたくさん集客できれば良いというわけではない:通常のマーケティングは、一般的にその商品をたくさん買ってもらい、売上を上げれば成功と言えます。一方で商品と異なり、採用は質の高い人材を必要な人数だけ獲得することが重要です。例えば採用イベントを開催する際、採用される可能性の低い候補者をたくさん集めてくるよりも、集客の人数は少なくても優秀な候補者を集めてくることができれば成功というケースもあるでしょう。
  • 採用は一般的にマーケティングほど広告にお金をかけられない:もちろん企業によって異なりますが、一般的には採用マーケティングが、一般のマーケティングほど予算を割くことが難しいです。なぜなら、商品を売るためのマーケティングでは、使った費用に対して売上がすぐに返ってくることが期待されますが、採用は人を雇えたからといってすぐに売上が上がるわけではなく、費用対効果の測定が非常に難しいからです。もちろん長期的に見ると優秀な人を雇うことができれば、その人が入社後に活躍して売上は上がるのですが、それを計測するのは事実上不可能と言っても良いでしょう。このような理由で、採用マーケティングに大きな広告費を使っている企業はほんの一握りの大企業のみと言えます。

まとめ

この記事では、採用マーケティングについて、通常のマーケティングとの共通点や違いを比較しながら見てきました。採用マーケティングは、企業が競争を勝ち抜くために不可欠な戦略になりつつあります。。通常のマーケティングとの共通点と違いを理解し、効果的な採用マーケティングを実践することで、理想の人材を獲得し、企業の成長を実現していきましょう。