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【アンゾフの成長マトリクスとは】4つの戦略を事例つきで解説

アンゾフの成長マトリクス

企業は成長を続けるために、さまざまな戦略を立て、実行する必要があります。その際、役立つフレームワークの一つが「アンゾフの成長マトリクス」です。本記事では、アンゾフの成長マトリクスの概要、各戦略の詳細、そして実践で役立つ具体的な事例を紹介していきます。

ライター:タイスケ|Taisuke
事業会社(日系および外資)でマーケティング歴10年以上。戦略立案など上流から広告やセールスライティングなどの下流までをワンストップで推進できることが強みです。豪州Bond大学でMBAを取得しており経営学にも精通しています。著書「マーケティング思考のセールスライティング基礎と定石」
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参考資料

  • 金森 努『最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング』
  • Schoo for Business『アンゾフの成長マトリクスとは?4つの成長可能性や多角化戦略の方向性について解説』

目次

アンゾフの成長マトリクスとは

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスは、イゴール・アンゾフという経営学者によって提唱された、企業の成長戦略を考えるためのフレームワークです。

このフレームワークは、以下の2つの軸で構成されています。

  • 製品/サービス: 既存か新規か
  • 市場: 既存か新規か

これらの軸を組み合わせることで、企業が成長を図るための4つの戦略が導き出されます。

  • 市場浸透戦略: 既存市場で既存製品/サービスを販売する
  • 新製品開発戦略: 既存市場で新規製品/サービスを販売する
  • 新市場開拓戦略: 既存製品/サービスを新規市場で販売する
  • 多角化戦略: 新規市場で新規製品/サービスを販売する

どのような時に役立つ理論か

例え1つのビジネスが成功したとしても、そのビジネスが永遠に成長することは不可能で、市場や環境の状況に合わせて、企業は常に新たな成長戦略を描くことが求められます。アンゾフの成長マトリクスは、企業が将来の成長戦略を描いたり、新規ビジネスに進出する際に役立つフレームワークです。

これは、企業が成長を図るための4つの戦略をシンプルに表したフレームワークであり、各戦略にはそれぞれメリットとデメリットがあります。企業は自社の状況に合わせて最適な戦略を選択する必要があるでしょう。

4つのマトリクスの戦略と事例

1. 既存製品×既存市場「市場浸透戦略」

「市場浸透戦略」は、すでに事業を行なっている市場の中で、すでに自社が提供している商品を、さらに市場に浸透させる手法で、以下のようま方法があります。

  • 顧客の使用頻度増大
  • 顧客の使用量拡大
  • 既存企業の顧客奪取
  • 非使用者の取り込み
  • 新用途開発

この戦略のメリットとしては、すでに社内にある既存のノウハウや資産を活用できるので、実現までのスピードが速いということでしょう。ただし、成長の大きさや意外性といった面では期待できるノビシロが限定的という側面もあります。

例えば、ティッシュペーパーの「鼻セレブ」は、元々「ネピア モイスチャーティシュ」として販売されていた商品です(1996年発売)。ブランド名を「鼻セレブ」変更し、パッケージにふわふわの動物を採用したことで、売上が10倍に増加したと言われています。これは、既存商品のコンセプトを変更し、プロモーションを強化することで事業成長を果たした良い事例でしょう。上記で触れた「非使用者の取り込み」「新用途開発」に当てはまります。詳しくは以下の記事でもご覧ください。

marketing101.hateblo.jp

2. 新規製品×既存市場「新製品開発戦略」

「新製品開発戦略」は、すでに事業を行なっている市場の中で、新たな製品を生み出し事業を成長させる方法で、以下のような方向性があります。

  • 既存製品の改良
  • 製品バリエーション開発
  • 新製品開発

この戦略は「市場浸透戦略」と同じく、実現までスピーディに行える可能性が高い点はメリットと言えます。「市場浸透戦略」とは異なり、既存商品を使うわけではなくあくまで新たな製品を開発する必要があるため、その分の時間は必要であることと、成功した際のノビシロが期待できることは留意が必要です。

例えば、トヨタは、既存市場である自動車市場で、ハイブリッド車という新規製品である「プリウス」を開発しました。リリース当時はまだハイブリッド車は一般的ではありませんでしたが、環境問題への意識の高まりから、徐々に市場を獲得していきました。

3. 既存製品×新規市場「新市場開拓戦略」

「新市場開拓戦略」は、すでに展開している事業や商品を、新しい市場で販売する戦略で、以下のようなものです。

  • 地理的拡大
  • 顧客セグメントの拡大
  • 新チャネル構築

最もわかりやすい戦略としては、国内事業を海外へ展開することでしょう。新たな製品を開発するわけではないので、その手間は省けますが、商品を輸出する国にローカライズさせたり、自社内にノウハウがない場合は、現地でパートナーシップを模索する必要も出てきます。

例えば楽天は、既存製品であるECサイト「楽天市場」を海外市場に展開しました。中国や東南アジアなどの成長市場に参入することで、楽天は事業を大きく拡大しました。

4. 新規製品×新規市場「多角化戦略」

最後の「多角化戦略」は、新たな商品を開発し、新たな市場で提供するという選択肢です。

  • 新たな領域への参入
  • 新規事業

成長市場で事業を始めると、大きな利益を上げることが期待できる分、社内に既存のリソースがない分野への進出は、その分時間や新たな人材も必要で、不確実性も高いということを留意しておくことが必要そうです。

まとめ

アンゾフの成長マトリクスは、企業が成長を図るための4つの戦略をシンプルに表したフレームワークです。各戦略にはそれぞれメリットとデメリットがあり、企業は自社の状況に合わせて最適な戦略を選択する必要があります。上記の事例を参考に、自社の状況に合った戦略を検討してみてください。