保湿ティシュ「鼻セレブ」を使ったことがある方も多いのではないでしょうか。この記事では、日頃私たちが使っているこの「鼻セレブ」の背景にあるマーケティング戦略について考察していきたいと思います。
マーケティングの成功の鍵は、消費者のニーズに応えることですが、その中でも特に重要なのが、消費者自身が気づいていない「潜在ニーズ」を見つけ、満たすことです。
ライター:タイスケ|Taisuke事業会社(日系および外資)でマーケティング歴10年以上。戦略立案など上流から広告やセールスライティングなどの下流までをワンストップで推進できることが強みです。豪州Bond大学でMBAを取得しており経営学にも精通しています。著者「マーケティング思考のセールスライティング基礎と定石」
★Follow me → X(Twitter)
参考書籍・資料
- 金森 努『最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング』
- DIAMOND online『鼻セレブやカレーメシも、「改名後」にヒットした商品たち』
目次
ネピア「鼻セレブ」とは
「鼻セレブ」は、元々「ネピア モイスチャーティシュ」として販売されていた商品です(1996年発売)。ブランド名を「鼻セレブ」変更し、パッケージにふわふわの動物を採用したことで、売上が10倍に増加したと言われています。この商品の成功は以下のような側面にあるのではないでしょうか。
「鼻セレブ」の成功要因は
消費者にとっては差が感じられないコモディティであるティッシュという商品市場の中で大きく差別化し「鼻セレブ」がロングヒット商品になっている要因は以下のようなところにあると考えられます。
- 通常のティッシュで鼻を何度もかむと肌が痛くなるという消費者の隠れたニーズ(潜在ニーズ)を捉え解決する商品を生み出したこと
- 「鼻をかむ時に肌に優しい」「高級感のある商品」であることを、4文字の「鼻セレブ」という超短的に表現した商品名
- 商品の特性(ふわふわ)とリンクしつつ、理屈抜きに好印象を与えるウサギやアザラシといった動物をパッケージに使用したこと(ハロー効果)
さらに1点目に挙げた「潜在ニーズ」について詳しく見ていきましょう。
顕在ニーズと潜在ニーズとは
顕在ニーズは、消費者が自覚している明確なニーズです。一方で潜在ニーズは、消費者がまだ意識していない隠れたニーズを指します。潜在ニーズを満たすことで、新たな市場を開拓することが可能になります。
- 【顕在ニーズの例】スマートフォンの長持ちするバッテリー:消費者は頻繁にスマートフォンを使用するため、バッテリーの持続力を重視します。ユーザーの口から「バッテリーが長持ちする商品が欲しい」という言葉が出てくる可能性が高いですよね。これは顕在ニーズの一例です。
- 【潜在ニーズの例】スマートフォンの健康管理機能:「スマホに健康管理機能がついていたらいいのに」という言葉はそれが存在していない段階で消費者の口からは出てきそうにありませんよね。どちらかというと、商品開発側が「もっと身近に健康管理をできるものがあれば消費者の健康意識の高まりに応えられるのではないか」と考え、それを実現したら市場に受け入れられたという順番が正しいでしょう。これは、潜在ニーズを捉えた例として考えて良さそうです。
潜在ニーズを発見する方法
隠れたニーズを発見するのは簡単なことではないですが、そのために重要なことをまとめておきましょう。
- ユーザーを本人よりもユーザーを理解すること:これはマーケティング担当者の使命と言っても過言ではないと思いますが、ユーザーをユーザー本人よりも理解することです。日常生活の中に潜在ニーズは隠されています。ユーザーの行動や悩みを観察することで、新たなニーズを発見しましょう。
- 負の感情を発見すること:鼻をかみすぎて肌が痛くなるといった小さな不満も、潜在ニーズの手がかりになります。これらの負の感情を解決する製品やサービスを提供することで、市場に新たな価値をもたらすことができそうです。
- ユーザー自身がニーズに気づけるように伝えること:発見した潜在ニーズを消費者に伝え、理解してもらうコミュニケーションが重要です。「鼻セレブ」の場合、柔らかい動物のパッケージデザインが肌に優しい製品であることを伝えるのに効果的でした。
まとめ
「鼻セレブ」の成功から学ぶべき点は、潜在ニーズの発見とそれを満たす製品開発、そして消費者への効果的なコミュニケーションの重要性です。マーケティングでは、顕在ニーズだけでなく、消費者がまだ気づいていない潜在ニーズにも注目し、それを満たすことで製品やブランドの成功を築くことができます。このように、潜在ニーズへの理解と対応は、市場での競争優位を築くために不可欠です。