クチコミマーケティングとは、消費者のクチコミを活用して、自社商品・サービスの魅力を伝えるマーケティング手法です。消費者から消費者へクチコミが拡散されていく仕掛けを施策することで、企業の商品やサービスの認知拡大や集客率・売上の向上をはかります。
クチコミマーケティングは、以下のようなメリットがあります。
- 直接的な広告費が少ない(場合による)
- 上手くいけば瞬間的な認知拡大に貢献する
- ポジティブなクチコミは消費者からの信頼を獲得できる
したがって、多くの企業で「良いクチコミを増やす」「バズらせる」ということをマーケティング担当者が求められます。しかし、それは簡単なことではありませんよね。
この記事では、”クチコミ狙う”が難しいワケや、クチコミの意味、マーケティング活用のポイントなどについて解説します。
ライター:タイスケ|Taisuke
事業会社(日系および外資)でマーケティング歴10年以上。戦略立案など上流から広告やセールスライティングなどの下流までをワンストップで推進できることが強みです。豪州Bond大学でMBAを取得しており経営学にも精通しています。著者「マーケティング思考のセールスライティング基礎と定石」
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参考書籍
トライバルメディアハウス 高橋 遼『熱狂顧客戦略』
山本 晶『キーパーソン・マーケティング』
フレッド・ライクヘルド, ロブ・マーキー『ネット・プロモーター経営』
目次
クチコミとは
クチコミとは、消費者同士の口コミや評判のことです。商品やサービスの品質や価格、利用体験など、消費者の率直な意見や感想が含まれます。
クチコミは、企業の宣伝や広告よりも、消費者にとって信頼性が高い情報源として認識されています。そのため、クチコミを活用することで、企業の商品やサービスの認知拡大や売上アップにつながる可能性があります。SNSが普及し、消費者が簡単に自身の消費体験をシェアできるようになったため、現代のマーケティングにおいてクチコミがますます重要になっていることは言うまでもないでしょう。
”クチコミ狙う”が難しいワケ
クチコミマーケティングは、効果的なマーケティング手法ですが、以下のような難しさがあるため、マーケティング担当者たちを苦しめているケースも多いでしょう。
消費者の反応はコントロールできない
クチコミは、消費者の自主的な行動によって発生します。そのため、企業がいくら良い商品やサービスを提供しても、消費者がクチコミをしてくれるとは限りません。単純な広告であれば企業側がコントロールできますが、消費者の反応は企業側でコントロールができないという点に難しさがあります。
成功セオリーがあるわけではない
クチコミマーケティングには、成功するセオリーがあるわけではありません。どのような施策をすれば、効果的なクチコミが発生するのか、明確な答えはないのです。
「絶対にバズる」と思っていた企画が消費者に受け入れられなかったり、企業の担当者の思いもよらない部分が消費者にポジティブに受け入れられてクチコミが生まれたりするのが現実です。
数値化(KPI化)しづらい
クチコミマーケティングの効果を測定するには、クチコミの量や質を数値化する必要があります。しかし、クチコミは消費者が自由に発信するものであるため、数値化が難しいという課題があります。
効果検証が難しいので予算がつきにくい
クチコミマーケティングの効果検証が難しいため、予算がつきにくいという課題もあります。例えば、ある商品がSNS上でバズったとしても、それが売上にどうつながったのかなどを数値化することは簡単ではありません。効果が見えにくいため、企業はクチコミマーケティングに積極的な投資をしない傾向があります。
クチコミを数値化する方法(NPS)
クチコミを数値化する方法として、NPS(Net Promoter Score)という指標があります。NPSは、顧客ロイヤルティを測定する指標であり、顧客満足度を測定する指標として利用されています。
NPSは、以下の質問によって算出します。
あなたは、(ブランド/企業名)を友人や知人に薦めたいと思いますか?10点満点で、お答えください。
9点もしくは10点と答えた顧客を「推奨者」、6点以下と答えた顧客を「批判者」と定義し、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPSとなります。
NPSは、0~100のスコアで表されます。スコアが高いほど、顧客ロイヤルティが高く、クチコミを拡散してくれる可能性が高いと判断できます。
NPSを活用するポイント
NPSを活用する際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
定期的に調査を行う
NPSは、顧客の満足度やロイヤルティを継続的に測定するために活用します。そのため、定期的に調査を行うことが重要です。
スコアだけでなく、推奨者の意見も分析する
NPSのスコアが高いだけでは、推奨者がどのような理由で商品やサービスを薦めたのか、具体的な意見を分析する必要があります。
スコア向上に向けた施策を実施する
NPSのスコアが低い場合は、スコア向上に向けた施策を実施する必要があります。
UGC活用ツールを利用する
UGCとは
UGCとは、User Generated Contentsの略で、企業ではなく一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツのことを指します。
具体的には、SNSへの投稿、ECサイトの商品レビュー、口コミサイトのレビュー、ブログ記事、動画、写真などが挙げられます。
UGC活用ツールでできること
UGCを活用するためには、UGCを収集・分析・活用するためのツールが必要です。
UGC活用ツールには、以下の3つの機能を備えたものが多くあります。
- 収集機能:ハッシュタグなどを検知して、SNSやECサイトなどからUGCを収集する機能です。
- 分析機能:収集したUGCを分析する機能です。
- 活用機能:分析したUGCをマーケティング活動に活用する機能です。
これらを利用して、クチコミの状況を数値化するのも一つの手法でしょう。
「熱狂度」を使う
NPSに加えて、「熱狂度」という指標を活用する方法もあります。「熱狂度」はトライバルメディアハウス『熱狂顧客戦略』で提唱された手法で、ブランドに対する熱量を計測する手法です。
そこで本書はNPSに加えて、「熱狂度」をブランドに対する熱量を測る指標として提案したい。購入している人がどのくらいブランドを愛して買ってくれているのかを計測し、そういう人たちの割合を算出するのだ。ある商品やサービスを良いと思うか、あるいは満足しているかを測るのではなく、そうしたレベルを超えた「存在」になっているかを尋ねるのだ。売上が企業を形作る骨格なら、熱狂度は筋肉と言える。どれだけ骨格がしっかりしていたとしても、しっかり筋肉がついていなければ成長や発展は望めないだろう。自社の売上の健全性、確実性、将来性をさらに強固なものにするために顧客の熱量を知ることは欠かせない。
熱狂度とは
<顧客に対する設問内容>
あなたにとって◯◯◯(ブランド名)はどのような「存在」ですか?
あなたのお気持ちに最も近いものを1つだけお選びください。<回答内容>
1.私は◯◯◯を、なんとなく使っている
2.私は◯◯◯を悪くはないと思いながら使っている(そこそこ満足)
3.私は◯◯◯を好きで使っている
4.私は◯◯◯に愛着を感じながら使っている(幸せを感じる)
5.私は◯◯◯にすっかりハマっている(夢中だ、ぞっこんだ)1~2:熱狂度Low
3:熱狂度Middle
4~5:熱狂度High
まとめ
クチコミマーケティングは、消費者の信頼を獲得し、認知拡大や売上アップにつながる効果的なマーケティング手法です。しかし、消費者の反応をコントロールできない、成功セオリーがない、数値化や効果検証が難しいなどの難しさもあります。ここでご紹介した方法を押さえて、少しでも数値化し、客観的に効果を管理することがオススメです。