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イノベーションはこう生まれる|優れた起業家が実践する「5つの原則」

エフェクチュエーション理論

エフェクチュエーション理論

世界的経営学者が発見した戦略や計画よりも重要な思考法「エフェクチュエーション」をご紹介します。書籍『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』をベースとしています。

ライター:タイスケ|Taisuke
事業会社(日系および外資)でマーケティング歴10年以上。戦略立案など上流から広告やセールスライティングなどの下流までをワンストップで推進できることが強みです。豪州Bond大学でMBAを取得しており経営学にも精通しています。
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目次

この本の概要

本書は、世界的経営学者サラス・サラスバシー教授によって体系立てられた、優れた起業家の思考法「エフェクチュエーション」の日本初の入門書です。エフェクチュエーションとは、予測や計画を重視するコーゼーション(因果論)とは異なり、手元にある手段や資源を活用して、現状から効果(effect)を生み出すための思考法のこと。

もう少し噛み砕いて言い換えると、「目標から逆算してプランを立てビジネスを作る」という順番ではなく「今手元にあるリソース(スキルや人脈など)を最大限に活用してビジネスを創る」という順番で考える思考法と言えます。私はMBAでこの理論に則り、ビジネスプランを立てました。

筆者情報

著者の吉田満梨氏は、神戸大学大学院経営学研究科准教授。中村龍太氏は、マイクロソフトやサイボウズなどで実務経験があり、起業家精神に関する深い理解と実践的な経験を持ちます。二人ともエフェクチュエーションの研究に取り組んでおり、本書では、エフェクチュエーションの基本的な考え方や、その実践方法をわかりやすく解説しています。

エフェクチュエーション「5つの原則」とは

エフェクチュエーションには、以下の5つの原則があります。

【Bird in Hand(手中の鳥の原則)】

手元にあるリソースを活用すること。すでに持っているものや、手に入れやすいものを活用することで、リスクを減らしながら成功に近づくことができる。

【Affordable Loss(許容可能な損失の原則)】

まずは「損失(マイナス面)」が許容可能かに基づいてコミットするという原則です。失敗しても許容可能なラインを明確にすることで、思い切った挑戦ができます。

【Lemonade(レモネードの原則)】

不利な状況を有利な状況に変えていくこと。困難な状況を受け入れ、そこから新たな価値を生み出すことで、成功につなげようとする思考です。

【Crazy Quilt(クレイジーキルトの原則)】

多様なステークホルダーとの協力関係を構築し、共創による価値創造を目指すこと。使える人脈を強みと捉えて活用することです。

【Pilot in the Plane(飛行機パイロットの原則)】

飛行機のパイロットのように、状況に応じて柔軟に対応すること。予測ではなくコントロール可能な事柄に集中する思考法です。

読書レビュー

  • エフェクチュエーションという経営学でも非常に重要な考え方を、多くのビジネスマン向けにわかりやすくコンパクトにまとめたという点で、非常に価値のある1冊だと思います。
  • 研究者としての視点だけではなく、実業家である中村龍太氏を著者に加え、実務の面でどう活用されるべきかという点まで網羅されているため、さらに役立つ内容となっています。
  • 私はこのエフェクチュエーション理論を、イノベーションのジレンマを克服するためのものだと理解しています。イノベーションとは、合理的に考えて生まれるものではありません。

まだ主要な交通手段が馬車であった20世紀の初頭に、累計1500万台以上も販売され、産業と交通に革命をもたらした自動車「T型フォード」の開発者であるヘンリー・フォードの言葉ともいわれるものに、「もし人々に何が欲しいかを尋ねたら、彼らはより速い馬と答えただろう」があります。

「まずニーズを捉えて目標を設定してそれを実現する方法を探す」のではなく、「強みや今ある技術をどのように活用できるか」という逆の順番で思考することでイノベーションが生まれると言えるのではないでしょうか。