ビジネスの世界では、企業の競争力を高めるために、さまざまな経営戦略や分析手法が用いられています。その中でも、マッキンゼーの7Sモデルは、企業の内部環境を分析するためのフレームワークとして、広く知られています。
この記事では、マッキンゼーの7Sモデルの意味や使い方、事例について、初心者でも理解できるように解説します。
ライター:タイスケ|Taisuke
事業会社(日系および外資)でマーケティング歴10年以上。戦略立案など上流から広告やセールスライティングなどの下流までをワンストップで推進できることが強みです。豪州Bond大学でMBAを取得しており経営学にも精通しています。
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目次
マッキンゼーの7Sモデルとは
マッキンゼーの7Sモデルとは、世界的なコンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニー社によって提唱された、企業の内部環境を分析するためのフレームワークです。7つのS要素を組み合わせることで、企業の競争力を構成する要素を総合的に理解することができます。
7つのS要素は、以下のとおりです。
- 戦略(Strategy): 組織が市場で競争するための計画や方向性。
- 構造(Structure): 組織の内部の配置、つまり部門、チーム、個人がどのように組織化されているか。
- システム(Systems): 日常業務の遂行に必要な手順やプロセス。
- 共有価値観(Shared Values): 組織の中心にある価値観や文化。元々は「超越目標(Superordinate Goals)」と呼ばれていました。
- スキル(Skills): 組織として持っている能力や専門知識。
- スタッフ(Staff): 従業員とその能力。
- スタイル(Style): 組織のリーダーシップスタイルや従業員間の相互作用の仕方。
7つのS要素は、大きく「ハードS」と「ソフトS」に分けることができます。
- ハードS:戦略、構造、システム
- ソフトS:スタイル、スタッフ、スキル、共有価値観
ハードSは、企業の目に見える部分であり、比較的短期間で変更が可能です。一方、ソフトSは、企業の価値観や文化など、目に見えない部分であり、変更には時間と労力が必要です。
7Sモデルはどのような時に使えるモデルか
7Sモデルは、以下の場合に活用することができます。
- 企業の現状を把握する
- 企業の競争力を分析する
- 企業改革を推進する
7Sモデルを用いることで、企業の内部環境を総合的に把握することができます。これにより、企業の強みや弱み、課題を明確にすることができます。また、7Sモデルは、企業改革の指針としても活用することができるでしょう。
この後詳細に触れますが、SWOT分析や3C分析などと異なり、7Sは企業の内部環境にフォーカスしています。したがって、外部環境の状況というよりも、企業の内部環境の分析をする際にはより役立つものになります。
7SモデルとSWOT分析の違い
SWOT分析は、企業の外部環境と内部環境を分析するためのフレームワークです。7SモデルとSWOT分析は、どちらも企業の経営戦略を策定するためのフレームワークですが、その対象とする環境が異なります。
SWOT分析は、企業を取り巻く外部環境(機会と脅威)と、企業の内部環境(強みと弱み)を分析します。一方、7Sモデルは、企業の内部環境(戦略、構造、システム、スタイル、スタッフ、共有価値観)を分析します。
7Sモデルとファイブフォース分析の違い
ファイブフォース分析は、企業を取り巻く競争環境を分析するためのフレームワークです。7Sモデルとファイブフォース分析は、どちらも企業の経営戦略を策定するためのフレームワークですが、その対象とする環境が異なります。
ファイブフォース分析は、企業を取り巻く競争環境(新規参入の脅威、既存企業の競争、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力)を分析します。一方、7Sモデルは、企業の内部環境(戦略、構造、システム、スタイル、スタッフ、共有価値観)を分析します。
企業の事例
以下で、スタバ、ユニクロ、Netflixという現代を代表する企業を7Sの観点で見てみましょう。企業のことを網羅的に俯瞰できて、気づきを得られるのではないでしょうか。
スターバックスの事例
- 戦略 (Strategy): スターバックスは、高品質なコーヒーと顧客体験に重点を置いた戦略を採用しています。
- 構造 (Structure): 分散型の店舗管理構造を採用し、各店舗が地域社会に根ざした運営を行えるようにしています。
- システム (Systems): 効率的な在庫管理や顧客関係管理システムを導入しています。
- 共有価値 (Shared Values): カフェ文化の促進と持続可能なビジネスプラクティスを重視しています。「サードプレイス」を提供するという方針も、共有の価値観と言えるでしょう。
- スタイル (Style): 協調的でオープンなコミュニケーションを重んじるリーダーシップスタイルです。
- スタッフ (Staff): 従業員に対する継続的なトレーニングと教育を提供しています。スターバックスのスタッフは、自社のブランドを愛し、活き活き働いているように見えます。
- スキル (Skills): カスタマーサービスとバリスタ技術において高い専門性を持っています。
ユニクロの事例
- 戦略 (Strategy): シンプルで実用的な衣類を提供することにより、幅広い顧客層を対象としています。
- 構造 (Structure): 効率的なサプライチェーンと中央集権的な経営構造を持っています。
- システム (Systems): 迅速な商品開発と在庫管理のための高度なシステムを導入しています。
- 共有価値 (Shared Values): 品質と価格のバランスに重点を置いたコーポレートカルチャーです。
- スタイル (Style): 革新的で前向きな経営スタイル(企業文化)を持っています。
- スタッフ (Staff): 従業員の能力開発に注力し、高いモチベーションを維持しています。
- スキル (Skills): 効率的な生産プロセスとマーケティング戦略において特有の専門性を持っています。
Netflixの事例
- 戦略 (Strategy): オンデマンドのストリーミングサービスと独自コンテンツの開発に重点を置いています。
- 構造 (Structure): 柔軟かつ迅速な意思決定を可能にするフラットな組織構造を採用しています。
- システム (Systems): 高度なデータ分析とアルゴリズムを用いた推薦システムを構築しています。
- 共有価値 (Shared Values): イノベーションとユーザー体験を最優先する企業文化です。
- スタイル (Style): 自由で創造的な働き方を奨励する経営スタイルを持っています。
- スタッフ (Staff): 高いクリエイティビティと専門性を持った人材を集めています。
- スキル (Skills): コンテンツ制作とテクノロジー開発の両方において高度な技術を保持しています。
まとめ
マッキンゼーの7Sモデルは、企業の内部環境を総合的に分析するためのフレームワークです。7つのS要素を組み合わせることで、企業の強みや弱み、課題を明確にすることができます。また、7Sモデルは、企業改革の指針としても活用することができます。