皆さんは、普段の生活の中で、自分の意思とは関係なく、ある行動をとるように促された経験はありませんか?例えば、レジ待ちの列に並んでいるときに、足元に足あとマークがあるのを見たことはありませんか?このマークは、言葉にせずとも自然と顧客を列に並ばせる効果があります。
このような、人々の行動を、直接的な強制や禁止をせずに、望ましい方向に誘導する方法のことを、ナッジ理論といいます。ナッジ理論は、行動経済学の分野で研究されている理論であり、近年では、マーケティングや行政など、さまざまな分野で活用されています。この記事では、ナッジ理論の概要と、マーケティングへの活用例について解説します。
目次
ナッジ理論とは
ナッジ理論とは、「行動を直接的に強制したり禁止したりせずに、人々がより望ましい行動をとるように促す方法」を意味します。ナッジ理論の原理は、人間は常に合理的に行動するわけではないということです。私たちは、さまざまなバイアスや心理的要因の影響を受けて、行動を決めています。
ナッジ理論は、こうしたバイアスや心理的要因を理解し、それを利用することで、人々の行動を望ましい方向に誘導しようとするものです。
ナッジ理論の由来
ナッジ理論の名称は、英語で「肘でつつく」を意味する「nudge」から来ています。ナッジ理論を提唱した、アメリカの行動経済学者、リチャード・セイラー氏は、ナッジ理論は、親が子供をそっと後押しするようなイメージだと説明しています。
ナッジ理論の身近な例
- レジ待ちの足元にあるマーク: 店舗でのレジ待ちの列を整理し、効率的な購買行動を促します。
- 男性用トイレにあるハエマーク: 清潔を保ちやすくするため、意図的に設置されています。
- 階段にある降りる人と上がる人のマーク: 歩行の流れをスムーズにし、混雑を避ける効果があります。
マーケティングでの活用例
日常生活だけでなく、ナッジはマーケティングでも幅広く活用されています。
- メルマガの購読をデフォルトにする: 初期設定で購読オプションをオンにし、消費者の選択を誘導します。
- 松竹梅の法則(極端回避性): 3つの選択肢を提示し、中間の選択肢が選ばれやすくする戦略です。
- アップセル/クロスセル:「あと○○円の購入で送料が無料になります」など 少額追加での購入を促し、消費の増加を目指します。
ナッジを評価するためのフレームワーク『EAST』
このフレームワークは、ナッジが効果的かどうかを評価するための指標です。ナッジをマーケティングに取り入れる時にチェック項目として活用できます。
- Easy(簡易的か?): 実行しやすいか
- Attractive(魅力的か?): 魅力的な提案か
- Social(社会的か?): 社会的承認や影響を含むか
- Timely(良いタイミングか?): 適切なタイミングで提供されているか
ナッジを学ぶためのおすすめ本
本格的に学びたい方におすすめなのは、行動経済学の研究者リチャード・セイラーの本です。
基礎を気軽に学びたい方には、見るだけノートもおすすめです。
まとめ
ナッジ理論は、私たちの行動を、直接的な強制や禁止をせずに、望ましい方向に誘導する方法です。日常生活の中で、ナッジ理論が活用されている場面を探してみてはいかがでしょうか。